ルイ14世(太陽王)

ベルサイユ宮殿
 
トリノ王宮

西洋古美術フォーラム

アンティークと西洋美術についてのレファレンス


【序】アンティークとは

1.)アンティーク:100年以上前の美術工芸品。
2.)絵画など芸術作品(Fine Art)に対して、装飾美術(Decorative Art)、応用芸術(Applied Art)とも呼ばれる。
3.)一点ものの芸術作品とは違い、販売を目的にある程度大量に作られたもの。
事業として成功させるには時代の流行に沿った様式のものになる。そのため様式から年代を推測できる。

    
鑑定の際にマークを見てしまうと判断に影響が出る。正しい鑑定法
(少なくともサザビーズでは)は、先ずよく観察して様式や技法などから生産国・時代を推定する。最後にマークを推定と一致するか確認する。もし食い違う場合はマークの方を疑うほどに鑑定眼を養うのがエキスパートへの道である。



    
ここでは先ず、それぞれの時代精神と装飾様式(流行)について概観し、続いてシルバー・ガラス・家具・陶磁器について、それぞれの技法や各国・各時代の特徴について解説する。併せてシルバーと陶磁器のマークについて主なものを紹介する。


 

【I】時代精神と装飾様式

1.) 18世紀(1700年代)絶対王政から革命へ 宮廷美術、特権階級、権威の象徴
  様式ヨウシキメイ パトロン 特徴トクチョウ モチーフ
@ バロック ルイ14セイ 重厚、劇的、豪華 古典(ギリシャ・ローマ)の引用
    太陽タイヨウオウ 構築的、立体的、左右サユウ対称タイショウ アラベスク模様
A ロココ ルイ15セイ 軽妙洒脱、優美、曲線的キョクセンテキ CとSの曲線
    宮廷キュウテイ 非構築的、平面的、装飾的、非対称ヒタイショウ 植物・貝殻文様
B 新古典主義 ルイ16セイ 直線的、繊細、洗練センレン アカンサス・パルメット・ギリシャライモン
    宮廷キュウテイ やや構築的、やや立体的、左右サユウ対称タイショウ 遺跡発掘ブーム(ポンペイ、ヘルクラネウム)
C アンピーユ様式 ナポレオン 権威主義、ツヨイロ使ヅカ エジプト(征服地)趣味の折衷
    新興シンコウ勢力セイリョク 新古典主義の延長上、平面的ヘイメンテキ 月桂冠ゲッケイカンとNの文字
2.) 19世紀(1800年代)中産市民階級ブルジョワジーの台頭 様式の折衷、大量生産、一般大衆の需要、好みの多様化、植民地文化の流入
  様式ヨウシキメイ   特徴トクチョウ、きっかけ モチーフ、具体グタイレイ
@ レジェンシー様式ヨウシキ   豪華ゴウカ絢爛ケンラン重厚ジュウコウ華麗カレイ オリエンタル趣味シュミ中国チュウゴクから中東チュウトウまで)
  ジョージ4セイ皇太子コウタイシ様式ヨウシキ   大英ダイエイ帝国テイコク絶頂期ゼッチョウキ産物サンブツ ブライトン・パヴィリオン
A リバイバル趣味 ゴシック 懐古カイコ趣味シュミ中世チュウセイ趣味シュミ 尖頭アーチ、三弁四弁の花びら模様
    ロココ 王政オウセイ復古フッコ(フランス) ロココテキモチーフの引用インヨウ
B アーツ&クラフツ運動   美術と工芸の統一トウイツ ウィリアム・モリス、リバティー商会
  英国エイコクバンアールヌーボー)     ラファエル前派、マッキントッシュとグラスゴー
C 異国趣味   万国博覧会、植民地文化 オリエンタリズム(中近東)
      日本ニホン開国カイコク ジャポニズム
D 世紀末趣味   退廃的、耽美的、象徴ショウチョウ主義シュギ モロー、ルドン、ビアズレー、
      クリムト、シーレとセゼッションの画家ガカタチ
E アールヌーボー   曲線、非対称、引延ばした形 草花など自然モティーフの文様化、ジャポニズム
  英国エイコクノゾく)   源流はロココリバイバル アーツ&クラフツ、セゼッション、ナンシー
3.) 20世紀(1900年代)技術革新と新しい価値観 機械文明の発達、新しい素材、新しい技術、近代デザインの誕生
  名前ナマエ   特徴トクチョウ 具体グタイレイ、メンバー
@ ヴィーナ・ヴェルクシュタット 1903年設立 工芸コウゲイデザイン工房コウボウ コロ・モーザー、ヨーゼフ・ホフマン
  オーストリア   セゼッション、アーツ&クラフツの影響  
A デ・シュティル 1917年設立 工芸コウゲイデザイン&抽象チュウショウ絵画カイガ 建築家ファン・ドゥースベルグ、リートベルト、
  オランダ   バウハウスに影響を与えた 画家モンドリアン
B バウハウス 1919ネン設立 近代デザインの学校ガッコウ 校長ワルター・グロピウス(建築家)
  ドイツ   建築モデュールの概念-日本の影響 ル・コルビジエ(建築家)
      近代ビルディングデザイン ミース・ファンデア・ロ−エ(建築家)
C アールデコ   第一次大戦後に流行した直線基調のデザイン ラリック、バカラ、ジェンセン...
      機械による大量生産を肯定  
      名前の由来は1925年 L’Exposition Internationale des Arts Decoratifs et Industriels





陶磁器、ガラス、シルバー、はアンティーク工芸品の三大分野です。アンティークの見立てには先ずそのモノが何であるか、素材は?製法は?装飾は?といったことを知る必要があります。そのための基礎となる要点を三大分野ごとにご紹介します。

 

【II】陶磁器種類と歴史

1.)磁器と陶器の違い

@磁器Porcelain:光を透す、水を吸わない、素地()と釉薬(うわぐすり)が完全に融合している。弾くとキンと金属質の音がする、
焼成温度が高い=12001450

A陶器Pottery:光を透さない、水を吸う、素地()と釉薬(うわぐすり)が充分に融合していない。弾くとポンと鈍い音がする、
焼成温度が低い=8001100

陶磁器の種類

磁器 ポースレン   陶器 ポッタリー
             
硬質磁器 軟質磁器   錫釉陶器 塩釉陶器 b器せっき 硬質陶器
(真正磁器) (模造磁器)   すずゆう えんゆう (無釉陶器) ストーンウェア

 

2.)硬質磁器(真正磁器)と 軟質磁器(模造磁器)

@ 磁器=高価な輸入品、東洋の神秘

磁器はマルコ・ポーロ「東方見聞録」にも製法が紹介されていた。カオリン(磁土)の知識はあったが西洋では見つからず、東洋からの輸入が唯一の入手法だった。

中国からの輸入:例えば18世紀前半の英国の貴族が自分の家紋の入ったセットを注文する場合、先ずロンドンで東インド会社の船長に注文を依頼、船長が南京に到着した時点で中国の商人に発注、船長は一度イギリスへ帰り、次の航海で注文の品を受け取り、注文主の貴族に届けた。つまり貴族が注文してから手に入れるまで二航海が必要となり、当時ヨーロッパ〜中国間が片道一年近くかかっていたことを考えると往復二年、二航海で四年以上待たなければならなかったことになる。

A 軟質磁器:セーブル、ボーンチャイナ

このように磁器を手に入れるには大変な手間ひまと相当な金額が必要だった。そのため各国で自前で磁器に匹敵するものを作ろうとして、カオリンを含まない模造磁器が作られた。これを硬質磁器(真正磁器)に対して軟質磁器と呼ぶ。各時代・各国で様々な成分・製法が試された。主に陶土、長石、ガラス粉末、骨灰、石灰、石膏などの混合物。

a)  セーブル:
                フランスでは17世紀末のサン・クルーに始まり、シャンティイ〜ヴァンセンヌ〜セーブルと軟質磁器が作られた

            
特にセーブルではマイセンでの硬質磁器開発以後もあえて軟質磁器を作り続けた。
                セーブルは純西洋風陶磁器デザインの
「原点」であり「頂点」である。
                                        
特徴:温かみのある乳白、透光性あり、微妙な色調の絵付け

) ボーンチャイナ:
                -
イギリスでは最初ブリストル、続いてウースターソープロック(凍石)を含んだ軟質磁器が作られた。
                                        
特徴:青みかった白、透光性あり、光にかざすと黄緑色に発色、凹みに釉薬の溜まりが見られる
                                        ことが多い。顔料の融着性が高い    
                 -
18世紀末にスポードボーンチャイナ生地を完成。硬質磁器に比べて成型しやすく、材料の骨灰も
                        手に入りやすかったので、以降は
ボーンチャイナがイギリス標準の磁器として定着した。
                                        
特徴:温かみのある乳白色、透光性に優れる、光沢が強い

B硬質磁器: マイセン、リモージュ

a) マイセン: 西洋初の本格的磁器
ザクセン侯国アウグスト王の命令によりベトゥガーが磁器製作に成功(1709)
その後マイセンから磁器の製法を知る職人が逃亡または引き抜かれて、ウィーン、ドイツ各地など諸国の窯が
設立される。
            
特徴:中国の磁器に非常に近い、乳白色、透光性あり、比較的厚手の造りが多い

b) リモージュ: 18世紀末にカオリンが発見されセーブルに生地を供給していた。19世紀前半にはいくつもの工房が出来た。
         フランス初の硬質磁器。
            
特徴:日本の磁器に非常に近い、青みがかった白、透光性が高い、薄手の造りが多い


磁器の知識

@ 軟質磁器と硬質磁器の見分け方

素地()の違い:
        
硬質磁器は軟質磁器よりも目が細かい。糸底などの素地の露出している部分を見ると違いが分かる。硬質磁器は極めて滑らかでケーキのアイシングのようだとすれば、軟質磁器は和菓子の落雁くらいと考えてもらえばよい。
細部の精密さ:
        
軟質磁器は素地が柔らかく造形しやすいが精密な細部には向かない。一方硬質磁器は素地が硬いため工具で削るように細部を形作れる。人形の指などの細部に注目すれば軟質磁器の「あまい」作りと硬質磁器の精密な作りの違いが分かる。
素地と釉薬の融着度合い:
        
軟質磁器は素地と釉薬が一体化しにくいので糸底など窪みに釉薬の溜まりが見られることがある。また風化により貫乳が入る場合が多い。硬質磁器には釉薬の溜まりは見られない。
釉薬と顔料の融着度合い:
        
軟質磁器は釉薬と顔料が良く馴染むために絵付けが釉薬の中に「沈んで」見える場合が ある。一方硬質磁器は顔料が釉薬に馴染みにくく絵付けは釉薬の上に「浮いて」見える場合がある。
色合いの違い:
        
軟質磁器は温かみのある乳白色であることが多いのに対して、硬質磁器はより冷たい青みがかった白の場合が多い。ただし窯により大きく違いがある。
 

A アンダーグレイズとオーバーグレイズ

アンダー・グレイズ(下絵付け)とは、生地に直接絵付けしてその上に釉薬をかける。対して釉薬の上に絵付けしたものがオーバーグレイズ(上絵付け)。濃い青色=コバルト(染付、呉須)はアンダーグレイズで、その他の色(赤黄緑など)や金彩はオーバーグレイズである。それは釉薬をかけて焼く本窯の高温に耐えうるのはコバルトだけで、他の色はより低い温度の錦窯(色絵焼き)でないと発色しないからである(高温で焼くとこげ茶色になってしまう)。金彩は特に高温に弱いので最後に低温で仕上げる。従って、金彩を含む多色使いの磁器の場合は少なくとも34回に分けて焼成されることになる。

 

B 磁器の製造工程

@.成型、乾燥

A.本窯又は素焼:約12001450℃(高温で素地と釉薬を一体化させる)

B.色絵窯:約800900℃(温度により発色が異なるため必要に応じて繰り返す)

C.金彩窯:約700800℃(最も低温)

 

3.)陶器の種類

@    塩釉陶器 Salt Glazed Earthenwareソルトグレーズド・アースンウェア
ドイツのビアマグなど。重く固い。ザラザラの表面が特徴。

A    錫釉陶器 Tin Glazed Earthenwareティングレーズド・アースンウェア
デルフトウェア、マヨリカ陶器など。土色の生地に白い釉薬をかけて磁器の白を真似た。

B    無釉陶器(b器せっき) 
ウェッジウッド(ジャスパーウェア)など。日本の常滑や備前などの焼締めに近い。

C    硬質陶器 ストーンウェア 
ウェッジウッド、メイソンなど。磁器とは違い不透明。